小学生最後の夏休みのことだったと記憶している。
当時別居していたばぁちゃん家へ家族で遊びに行ってみんなで食事へ出掛けた帰り道に大きな交差点で家族で信号待ちをしていた。
すると、横断歩道を渡り切った向こう側の歩道で中年の男性が1人うつ伏せで倒れているのを発見した。
急病人だろうか?
しかし、よく見るとその男の下には小学校低学年くらいの男の子が仰向けで下敷きになっていて、泣きながら手足をバタつかせていた。
これを見たおっさんの親父は、大声で
どうしたぁ? 大丈夫か?
と声をかけた。
すると、なんと倒れていたその男は急に立ち上がるや、一目散に逃げ去るではないか!
親父は、とっさに
待たんかい! この変態っ!
と叫んだかと思うと、車が来ていないことを確認して素早く赤信号の横断歩道を走って渡り、男の後方を追いかけ始めた!
変態男は車がビュンビュン走っている道路を斜めに横断してドンドン逃げて行く。
親父は自分も車道に飛び込んでなおも追いかける。
彼は学生時代は柔道部と陸上部をかけもちしていたという変わった人で、こと身体を使うということに関しては、人に遅れをとる姿は一度も見たことがない。
決死に追いすがるその姿を見て、子供心ながらおっさんは変態男の方の生命を心配してしまった。。
ところが更に驚いたのは、その後の母親とばぁちゃんの反応だった。
2人は、一緒に信号待ちしていた妹の手を引いて急いで横断歩道を渡ると、変態に襲われた男の子を介抱しながら事情を聞いて、近くのお店の人に通報を依頼した。
何という手際の良さであろうか!
おっさんはただ1人青信号になった横断歩道をポツリポツリと渡りながらこの状況を見ていた。
結局、変態男はその辺りの者であったようで、狭い路地に逃げ込んでしまって親父には捕まらなかったようだったが、しばらくして戻ってきた親父の怒りの矛先は息子であるおっさんに向かった。
彼は、
男は俺とお前の2人だけなのに、何で俺と一緒に走らんかった?
と言うのだ。
おっさんとしては、
赤信号だったから
としか答えようがなかった。
すると、親父はこう続けた。
なるほど。
では、お前は車がまだ走っていても信号が青だったら渡るってことだな。
ぐうの音も出ないとはまさにこのことである。。。
ウチの親父は普段は陽気な男で、ほとんど怒ったことなんてない。
でも、小学生とはいえ自分の息子の身の処し方に、どうにも納得がいかなかったのであろう。
おっさんは、自分と変わらぬような歳の子がひどい目にあっているのに何もしなかったのである。
これはおっさんが“男として恥かしい”と感じた初めての経験である。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
話は全く変わるが、今、日本が抱えている問題はまさに“赤信号”状態のものだらけである。
この赤信号を必要性に鑑みて敢えて渡ると言うのであれば、当然、後ろに続く者達は先頭を行く者に“男気”つまり“こいつは汗をかいているのか?”ということを求めるはずである。
先程の話で言うと、おっさんは他の何もしなかった者からではなく、1番に駆け出した親父に指摘されたからこそ、顔から火が出るほど恥ずかしくなり、またその話にも納得したのである。
何も国のお偉い方々に“あんた達も身体を張れ”なんて幼稚なことを言うつもりはない。
だけど、例えば最近注目の原発問題では「政治生命を賭けるノダ!」なんて言ってる人達よりも、以前にも書いた原子炉への放水作業に従事した消防団員や警察官、自衛隊員の方々の方が何百倍も頼もしいと感じるのはおっさんだけだろうか?
あれだけ頑張った彼らが給与をカットしろとまで言われてるのは何かおかしい気がする。
“汗をかいた者こそ物申す権利を持つ”というのがものの道理ではないのだろうか?
人を泣かせてでも必要な決断をすると言うのなら、自分の身を挺して“なるほど”と他を唸らせるだけの男気を見せて欲しいものだ。
※ 昨日から字をちっちゃくしてみたんだけどどうでしょう?
読みにくかったら、読まずにクリックだけしてもらってもいいノダ!
私が小学生だったら、一緒になって走ったかな?たぶん走らなかったと思います。印象に残る一言で男としての奮起をうながすお父さんはすごいですね。そして変態はなにをしたかったのでしょうね???
返信削除えぞばふんうにさんコメントありがとうございます!
削除変態はこれからって時に親父に声をかけられたんだと思います。
これからの季節は特に気をつけないといけませんね。。。