おっさんは普段“ロン”とは呼ばれていない。
このあだ名は高校時代に親友の“師匠”がつけたものである。
“師匠”といっても何かの先生とかってことではない。
お笑いが大好きで、お笑い芸人には全て後ろに“〜師匠”と付けて呼んでいたのでいつしかそういう呼び名になったのだ。
顔はおっさんの方がかなり男前だったが、師匠は身体がデカくて柔道、水泳、かけっこと何をやってもだいたいおっさんとは互角でライバルだった。
ただし、勉強に関しては、田舎で小さい頃から“神童”と呼ばれていた師匠には、ついぞ一度も勝てなかった。
性格も思考も全く違う2人だったが、互いに田舎から出てきていたということもあったのか、妙に気が合ってしまい入学してすぐにどこへ行くにも一緒という間柄になった。
(一応、誤解のないように断っておきますが、おっさんも師匠も共に男色の気はありません。)
(一応、誤解のないように断っておきますが、おっさんも師匠も共に男色の気はありません。)
あいつはどう思ってるかわからないけど、おっさんは一番の理解者だと思っていたし、当時からこいつとは一生の親友だと信じて疑わなかった。
いつも一緒に不毛な馬鹿話に興じてばかりの2人だったけど、大事なことはいつも互いに真剣に話し合ったし、悪い事もさんざん一緒にやった。
ところが、先にも書いたとおり、元々性格も考え方も全く違う2人である。
時が経てば違う進路を歩むのは当然で、師匠が地方の国立大学に進学する一方、おっさんはお気楽な地元私大生に収まることになった。
そして、特に何の根拠もなかったが、あいつは大学を卒業すればこちらに帰って来ると思っていたおっさんはしだいに連絡もとらなくなってしまっていた。
当然、師匠とおっさんは昔と変わらない馬鹿話に花が咲いて時間も忘れて久々に楽しい時間を過ごした。
ところが、その帰り道の電車の中で、師匠は、車外を走る自衛隊のトラックを指して妙なことを聞いてきたのである。
「自衛隊ってどう思う?」
当時、何らポリシーのないお気楽学生だったおっさんの答えなんて当然決まっている。
「あ?ようわからんけど、何か大変そうやなぁ?」
すると師匠からは仰天の答えが。。。
「俺は政治家になって国を変える。」
これは盆の頃の話である。
エープリールフールなんてことはない。
こいつはノストラダムスの大予言かなんかを信じてヤケクソになっているのかと思った。
しかし、師匠は大真面目に、更に続ける。
「この世に生まれた以上、世のためになる人になりたい。」
師匠に何があったのかはわからない。
正直その手の話は苦手だったおっさんは、ただあっけにとられるだけで、何も言えなかったが、その後は、また元の懐かしい馬鹿話に戻ったので、結局その話はそのままになった。
その師匠が死んだということを知ったのはそれから更に1年後のことだった。
交通事故で即死だったらしい。
でも、おっさんは未だ師匠の墓には行っていない。
おっさんは、あの時のあいつのテンションに付き合っていつか世のためになるような人になってやりたいが、どうもそんなことにはなりそうもないからだ。
ってか、いつかあの世でまた会うのは間違いないからね。
最初に書いたように、今、おっさんを“ロン”と呼ぶ人はいない。
でも、師匠は最後に別れたあの日もおっさんのことをロンと呼んでいた。
ところが、その帰り道の電車の中で、師匠は、車外を走る自衛隊のトラックを指して妙なことを聞いてきたのである。
「自衛隊ってどう思う?」
当時、何らポリシーのないお気楽学生だったおっさんの答えなんて当然決まっている。
「あ?ようわからんけど、何か大変そうやなぁ?」
すると師匠からは仰天の答えが。。。
「俺は政治家になって国を変える。」
これは盆の頃の話である。
エープリールフールなんてことはない。
こいつはノストラダムスの大予言かなんかを信じてヤケクソになっているのかと思った。
しかし、師匠は大真面目に、更に続ける。
「この世に生まれた以上、世のためになる人になりたい。」
師匠に何があったのかはわからない。
正直その手の話は苦手だったおっさんは、ただあっけにとられるだけで、何も言えなかったが、その後は、また元の懐かしい馬鹿話に戻ったので、結局その話はそのままになった。
その師匠が死んだということを知ったのはそれから更に1年後のことだった。
交通事故で即死だったらしい。
でも、おっさんは未だ師匠の墓には行っていない。
おっさんは、あの時のあいつのテンションに付き合っていつか世のためになるような人になってやりたいが、どうもそんなことにはなりそうもないからだ。
ってか、いつかあの世でまた会うのは間違いないからね。
最初に書いたように、今、おっさんを“ロン”と呼ぶ人はいない。
でも、師匠は最後に別れたあの日もおっさんのことをロンと呼んでいた。
だから、自分では今でもロンだと思っているのだ。
こんにちは。
返信削除同級生の死は
例え親しくなくても胸を打つものがあります。
親友でいらした方ならなおさらでしょうね。
ご冥福をお祈りします。
故郷に住む親友に会いたくなりました。
きままなマーシャさんコメントありがとうございました。
削除いやいやしばらくの別れです。
前後するのはただの運ですね。
良いヤツほど早く死ぬって言うじゃないですか。
人が悪くて男前なおっさんが後になっただけです。
土産話にもう少しこの世界を楽しんでから会いに行くことにします!
ronさん こんにちは♪
返信削除師匠と呼ばれるほど仲が良く何でも話し合える方
でこれからも一緒に楽しく語りたかったでしょうね。
師匠さんが亡くなられた時は悲しまれたでしょうが
ronさんの心の中に生き続けられているんですね。
柴犬ケイさんコメントありがとうございました!
削除また次に出会うのが少し遠ざかっただけなので、不思議と涙は出ませんでした。
でも、あの野郎は化けても出てこないんですよ。
墓にも行ってないことを怒ってやがるのか、向こうで余程楽しくやってやがるのか。。。
ってか、向こうでは死んだ時の姿なんすかね?
大学生とジジイでは喧嘩もできませんねぇ
心の中で生きている人、私も居ます。
返信削除ときどきヒョッコリ顔を見せておどけたり
忘れかけていた事を言ったりします。
生死の境い目って薄皮一枚の隔たりしかないのかも。
匿名さんありがとうございます。
削除師匠の場合はそういうアフターケアは一切ないんですよねぇ。。。