2012/12/09
お前、龍馬に嫌われるぞ!
昔、仕事で応援に行った先で知り合った後輩T君はとても好青年であった。
実直で慎み深く、何よりその田舎青年丸出しの冴えないルックスは彼の“良い人度”にますます拍車をかけていた。
当時“急ハンドル、急ブレーキ、急加速”の“3K”を信条としていたおっさんの指示にも嫌な顔ひとつせずまるでポチのように忠実に従うT君は誰からも可愛がられていた。
そのT君がある朝出勤してこなかった。
どうしたんだろうと心配していると、彼の同僚達は皆、“今日はあの日だからな”などと口々に言い合っている。
あの日って?
すると翌朝、彼は大量の土産を抱えていつも以上に元気に出勤してきた。
“どしたの?”と聞くと、“昨日は龍馬さんの命日じゃないですか!だからお墓参りとかいろいろ忙しかったんですよ”とT君。
知らんだろ。。。普通。。。
彼は坂本龍馬に心底傾倒していて毎年命日には墓参りやその事跡を辿り歩いているという。
早速、彼はおっさんに龍馬の手ぬぐいのような物をお土産として押し付けて来ると、受け取った以上は最後まで聞いてもらうぞと言わんばかりに仕事そっちのけで自らの坂本龍馬に対する熱い思いを語り始めた。
わかるだろうか?この感じ。。。。
自分の好みを押し付けて相手にも同じテンションを要求してくる暑苦しいこの感じが。。。。
好きなら好きで一向に構わないし、秘かに1人思ってその気持ちはブログや日記にでも書いておくなりすれば良いのだ。
好きでもないのに一方的に延々と話を聞かされた挙句、同意まで求められたらたまったもんじゃない。
このテンションだと、こちらが嫌いだと答えると、きっと非国民かのように罵ってくるに違いない。
おっさんの経験上、このタイプは、W杯前のサッカー日本代表ファンと坂本龍馬ファンには特に多いのである。
先日まで従順だったはずの彼もそのタイプであった。
“先輩も龍馬さん好きですよね?”と。。。
本当は坂本龍馬が大嫌いなおっさんにも容赦なくグイグイくるのである。
そもそも龍馬さんって。。。
しかし、何度も言うがT君はポチというか好青年である。
彼が可愛いかったおっさんは、ホントは佐幕派である自分を押し殺して“あぁ。。”と力なく答えざるをえなかった。
すると“やっぱり!先輩は龍馬さんのこと好きだと思ってましたよ!だって熱いもん!”と、フルスロットル過ぎてもはや手がつけられない状態のポチ。。。
熱いって。。。
じゃあお前は暑苦しいんだよ!
と思ったが、それはとても言えなかった。
そもそもおっさんは熱い男前だが、坂本龍馬は熱くないと思うのだ。
おっさんのイメージでは坂本龍馬っていうのは結構ドライで利に聡い野郎である。
多分、一緒に酒を飲んだら便所で喧嘩してしまうと思う。
ところが、ポチの上がりきったテンションは下がることを知らない。
しばらくの間おっさんは自分を押し殺し、まるで日本の外交姿勢のように、ただただ言われるがままに彼の話を聞き続けることとなった。
しかし佐幕派のおっさんにとって坂本龍馬話連続1時間攻撃は本当にしんどかった。
たまりかねたおっさんは、ついつい言ってはイケナイ一言を彼に投げかけてしまった。
“でも、同じ時代に生まれてたら、きっとT君みたいなタイプは龍馬には嫌われると思うよ”
おっさんも当時は若かったのである。
“自分も多分そう思います。。。”
力なく答えたT君のあの時の表情をおっさんは今でも忘れることができない。
こんなところに書いても全然伝わらないだろうけど、、、
あの時はゴメンねT君。。。。
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