今年になってからおっさんにはひとつの悩みがあった。
最近上の部屋に越してきたヤツが夜中までドンドンと大きな音を立ててうるさいのだ。
何をやってるのか、ひどい時にはカンカン!と金属音を鳴らしたり、ギコギコと何か切ったりするような音まですることもあった。
特に金曜日の夜はひどくて、普段は即死状態で寝入るおっさんでも不眠症になってしまいそうなくらいひどい。
しかし、文句を言いに行こうにも、先方は引っ越して来て以来、挨拶にも来ていなくて、いったいどんなヤツなのか得体も知れない。
ひょっとしたらテロリストが爆弾やロケットでも作っているのか?
いやいや、これはヤクザが抗争の準備を始めているのかも…
こうなって来ると、“近隣の騒音トラブルから殺人事件に発展!!”なんてニュースもふと頭をよぎる。
おっさんは見た目通り可愛い子リスのような小心者なのだ。
かなり悩んだ。
しかし、先日はとうとうキレてしまった。
3時半ですよ!3時半!
これが午後だったら“おやつの時間だ!”となるところだけれど、間違うことなくこれは午前3時半だった。
いつもの騒音を我慢してたら、突然耳をつんざくキンキンッ!と、“チャンバラ”のような高い音が。。。
熟睡できてなくて沸点がかなり低くかったのも手伝って、気がつくと上の部屋のドアの前に立っていた。
とりあえずインターホンを1回鳴らす。
騒音はピタリと止んだが、返事は全くない。
仕方ないので、今度は自分でも不気味なほどゆっくりと4回鳴らす。
すると、しばらくして、
“はい。。すいません。。”
と消え入るような弱々しい男の謝る声が微かに聞こえた。
勝利を確信したおっさんは、インターホンのカメラに目一杯顔を近づけて、真夜中には似つかわしくない明るいトーンで
“はじめまして!下の者です。
あ〜よかった!まだ起きてらしたんですね!
そりゃ3時半ですからね3時半!”
と紳士的な薄ら笑いを浮かべて話かける。
しかし、その男は
“すいません!本当にすいません!”
と、禁煙治療中の人みたいに、弱々しい声で連呼するだけでついに姿を現さなかった。
確かに、少し怖かったかもしれない。
夜中の3時半に全身黒づくめの男が薄ら笑いを浮かべながらインターホン越しに話しかけてくるのである。
実際、逆ギレでもしてこようものならルーデーズばりのバックドロップをお見舞いしてやろうと、ちゃんとアキレス腱伸ばしてからインターホン押したからね。
ひょっとしたらカメラには発現したおっさんのスタンドなんかも写っていたかもしれない。
確かにありゃちょっと恐いわな。。。
でも、こちらが何も言う前から平謝りだなんて、こいつは十分認識した上で3時半からチャンバラなんかをやってやがったということがこれでハッキリした。
考えようによっては恐ろしいヤツと言える。
翌日の日中、奥さんが突然挨拶に訪れた。
“昨日は主人が申し訳ございませんでした。。。”
“いえいえ”(何嫁さんに来させてんだよ。この野郎。)
“またご迷惑な時はおっしゃって下さいね。”
“いえいえ、こちらこそ昨日は大人げないことをして申し訳ありませんでした。”(次は生命をもらうぞ。。。)
結局、嫁さんも旦那が何をやっていたのかは言わなかった。
ホントに一体何をしてたんだろうか。。。
なんだろ? いい親父さんがチャンバラはないだろうし
返信削除金属を鳴らすような仕事? 芸術家?
全身黒づくめで行くって
それいいですね。
詰め寄る時は相手をビビらす・・・
早く解決しそうだし(適当
toriさんコメントありがとうございました。
削除いや、おっさんは基本的に普段黒づくめなんです。
なにせ20代の頃のあだ名が“暗殺者”ですからね。